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韓国からチベット論理学を学びに来た [仏教]

 京都での時間は矢のように過ぎていく。常に駆け足で動いているようである。昼食を摂る時間も満足にはない。空いている時間に様々な打ち合わせなどが入ってくるので、昼食は授業時間にかかってしまったりする。

 どうして忙しいかは、自分でもよく分からない。シンプルな生活とはとても言えないということだろう。人文情報学科という学科に属していることが忙しさの原因なのかもしれない。専門はチベット仏教だから専門の研究とは異なったことを教えていることになる。それは仕方がないこと、というわけではない。僕は、必要があれば、高校生相手に、あるいは高校の先生相手に教えたりすることもある。仕方がないからではなく、教えられることがあるから、教えようと思ってしまうのである。

 それが僕の基本にある。教えられることがあり、教えられるのに、教えないでいることはできない。学びたいという人がいれば、空いている時間を当てて教えてあげる。自分の時間は、こうして減っていく。

 今年度、韓国から大谷の大学院修士課程に一人の留学生が来た。一昨年、まだ学部生の頃に、その学生は佛教大学留学していた。そのときは日本語勉強し、また専門を考えることなく仏教一般の勉強をしていたようだ。たぶん、そのときに小野田先生の薫陶を受けたのだろう、チベット仏教の論理学に興味を持った。そして、いくつかの論文を読んでいくうちに、僕のもとに留学したいと考え、修士課程に入って再び日本に、そして大谷大学に留学してきた。

 今、チベット仏教を研究したいと言う学生は非常に少ない。驚くべきことに、と言ってもいいだろう。世の中のチベットへの関心が深まっているのに、研究者は、特に日本の研究者は非常に少ないのである。欧米では、チベット人僧侶が多数住んでいて、チベット寺院を開き、布教をしている。欧米の若い学生が仏教を勉強しようとするとき、まずチベット仏教から入る例が多くなっている。

 それに対して、日本にはチベット寺院は広島に一つしかない。身近にチベット人僧侶がいないので、学生はチベット語もチベット仏教も学ぶ機会がない。日本人の先生が教えればいいと思うかも知れないが、それを教えられる人は、やはり極めて少ない。要するにチベット仏教の研究者が少ないので、教える人がいないため、チベットを研究しようという学生も出てこない、そして次の世代もまたチベット仏教の研究者が現れない、という悪循環になっている。

 その韓国の留学生は、最初からチベット仏教の論理学を研究したいと考え、そのため留学してきたのである。留学期間は1年で、来年度は修士論文を書くという。普通、チベット語文献を読めるようになるには、毎週手解きをして、3年ほどかかる。その時間はないし、最初から目的がはっきりしているのであるから、僕は週に3回、講読会をすることにした。

 もともと、一コマはやっていたので、プラス2コマである。読むものも、論理学をメインにして、チベットの僧院で行われている問答のテキストと、ツォンカパの弟子であったダライラマ1世の論理学概論と、そして昨年から読んでいるツォンカパの主著の一つ『善説心髄』の唯識の章とである。他に、前回書いたインドの仏教論理学の概説『論理のことば』の講義にも出席している(そのチベット語訳を並行して読むようにアドバイスしてある。)。

 その留学生は、よく予習をし、また自分でもできるだけ考えてくる。講読中も、納得できるまで考えてから次に進むようにしている。仏教論理学は僕のところで勉強するのが初めてであり、基礎的な概念も全てゼロから教えているが、よく着いてきてくれる。一度、学んだことは吸収して、二度目にはきちんと訳せるようになっている。時間との勝負ではあるが、僕の教えられる限りのことを教えようと思っている。

 以上の講読と講義、そして東大での講読は録音データを作ってWebにアップしている。分からないところがあったり間違っているかもしれないし、また板書までは再現できないが、それでも、もし同じテキストを読もうとする初心者がいるならば、参考になるだろう。(最近、少しさぼっていてアップが遅れています。)
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コメント 5

一見

はじめまして。たまたまこのブログを拝見したものですが、

>以上の講読と講義、そして東大での講読は録音データを作ってWebにアップしている。

とのこと。これは一般に開放されているのでしょうか?

このブログ内にはそれらしいリンクがないようですので、
もし一般に開放されているものでしたら
アドレスを教えていただけませんか?
by 一見 (2009-05-31 00:32) 

一見

失礼しました。文中にリンクがあったみたいでしたね。
文中のリンクを別な辞書リンクかと思って無視してしまいました。
お騒がせしたことをお詫びします。
by 一見 (2009-05-31 00:48) 

自由人

少しずつ購読させて頂いております。中人物「苦諦」と「集諦」のファイルが同じもののようですが修正可能でしょうか。貴重なお話をありがとうございます。
by 自由人 (2009-11-26 17:57) 

yfukuda

自由人さん、ご報告ありがとうございます。
申し訳ありませんでした。リンクを修正しておきました。
続きも徐々にアップしていきます。とりあえず、あと2回分アップします。
by yfukuda (2009-11-26 22:03) 

自由人

今年の授業を楽しみにしております。お手すきの時に講義の録音データ(大人物1)(2009/6/29)のリンク修正お願いいたします!
by 自由人 (2010-04-17 23:15) 

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